「現代の名工」の手による、自然界の材料のみの藍液で染める 「天然灰汁発酵建」

「冠衣」の藍染めが欲しいと、友達からのリクエストがあった。菊田参号としても藍染めは以前より興味があったので、早速調べ始める。色々な藍染め屋さんが出てきたのだが、特に目を引いたのは、徳島県の「古庄染工場」。「徳島市無形文化財指定」「国選定卓越技能章(現代の名工)」を受賞されている紺屋古庄六代目の古庄紀治氏の藍染め工場だ。その肩書きもさることながら、その人物の魅力に惹かれた。ネット検索で出てきた情報だけなのだが、それだけでも十分に伝わるその魅力に惹きつけられ「この人に染めてもらいたい!」と強く想った。

古庄染工場にはホームページもメールアドレスもない。公開されているのは電話番号だけ。調べた翌日にはアポを取るために電話をかけてみる。突然の申し入れにも暖かくご対応いただき、徳島へ訪問する日時が決まる。初見の電話ながらSANGOUのコンセプトなどを説明すると「ガハハ」と笑ってお話ししてくださるその雰囲気に惚れた。より一層徳島への期待が高まっていた。

徳島駅に着くと、徒歩30分ほどの距離に古庄染工場はあった。その看板が歴史の深さを物語っている。毎回工場を訪問するときはワクワクする気持ちと同時に非常に緊張する。それは、看板から発せられるエネルギーに当てられてしまっているのかもしれない。待ち合わせの時間になり玄関を開けるとそこはもうすでに工場であった。モノづくりの現場が玄関から始まっている。なんともかっこいいその雰囲気に心を打たれる。

奥に通していただき、いよいよ古庄紀治氏と対面。職人としての強い佇まいながら、温和な表情で迎えていただいた。まず驚いたのは、その「手」だ。そこには「藍染職人の手」があった。まだ作業を開始していないにも関わらず、その手は肘のあたりまで「藍」に染まっていたのだ。長年この道を歩んできた「手」。その道を極めんとする「手」。その手の持つ表情に大変感動した。

藍染めは水が命だという。水に塩分が混じってくると染まらなくなってしまうのだ。古庄染工場でも水源が悪くなってしまい、長い歴史の中で2度ほど工場の場所を変えているとのことだ。

天然の藍染製品は、肌荒れを防ぎ、毒蛇や毒虫を寄せ付けないと言われてる。古くは、武士が戦場で野宿をする時などに効果を発揮し、燃えにくいため火消しの纏いや蒸気機関車の機関士の衣服として普及していたそうだ。古庄染工場では徳島県の?(すくも)を使用し、自然界の材料のみで藍液を作る 「天然灰汁発酵建て」によって、日本でも数少ない本物の本藍染めを行なっている。自分の手を藍釜に入れて生地を触って、水で洗って。釜の中での生地の状況を知る為にも手で触る。生地同士が触れているだけでも、均等に綺麗に染まらなくなってしまう。非常に繊細で気を使う作業を繰り返すのだ。日本の誇る天然の本藍染はそうやって完成する。職人古庄紀治氏がその「手」で染めた藍染めの冠衣。ぜひその身に纏って頂きたい。

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